「台湾の天才…スゲェ…!!!」
“台湾の頭脳”と呼ばれる、台湾デジタル庁の天才オードリー・タン!
日本のテレビにも出演し、何かと話題のオードリー初の自著【デジタルとAIの未来を語る】。感想レビュー!
これを読めば、オードリー・タンのすごさがざっくりわかりますよ!
オードリー・タンの本【デジタルとAIの未来を語る】感想レビュー!
オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る オードリー・タン 著
テクノロジーを活用した新しい政治、経済、ライフスタイルの時代がはじまっている
オードリー・タン、世界初の自著!
IT業界の世界的異才に実施した20時間超のインタビュー
この本は全5章で成り立っています。ひとつづつ見ていきましょう!
序章~第一章 《AIが開く新しい社会》
序章 信頼をデジタルでつないだ台湾のコロナ対策
第1章 《AIが開く新しい社会》 デジタルを活用してより良い人間社会を作る
序章は、台湾でのコロナ対策のお話。そして第一章では、AIなどのデジタルを使って作る新しい社会についてのお話でした。
2020年のパンデミック。台湾での「マスク在庫マップアプリ」をニュースで見た方も多いでしょう。
台湾の「マスクマップ」ができるきっかけは、一人の市民が、近隣店舗のマスク在庫を地図アプリで公開したことから始まりました。
それをチャットアプリ「Slack」で知ったオードリーさん。
シビックハッカー(市井のプログラマー)に呼びかけ、マスクマップを作る提案をしました。
シビックハッカーたちが協力して、どこの店舗にどれだけマスクがあるのかリアルタイムでわかる地図アプリを次々に開発したそうです。
これによって、誰もが安心して効率的にマスクを購入できるようになりました。
こういった経緯で、台湾におけるマスク対策は成功を収めました。
しかしこの成功をオードリーさんは、「政府と人々の信頼関係によるものだった」と言います。
「政府が人々を信用していなければ、強制力によって管理することになっていたでしょう」と。
最初から「誰かが違反するだろう」などという先入観を持って強制的なやり方を選択するのは、いい方法ではありません。
誰も感染したくないのだから、「どうすればお互い協力できるのか」を考えるべきなのです。
それが政府と人々の信頼につながるのです。
そしてその信頼関係があったことが、台湾において感染拡大を防いだ最大の理由だった、というお話でした。
このような相互信頼が、社会のデジタル化を進めるときに必要不可欠な条件になる。
と、オードリーさんは考えています。
そしてAIについてのお話ですが、「AIはあくまでも人間を補助するための道具で、ドラえもんみたいなものだ」ということです。
「高齢者など、デジタルに慣れない人々が取り残されるのではないか」といった意見もあります。
ですが、それならば使いやすいように改良していけばいい。
「デジタルを学ばないと時代に遅れてしまうよ」という態度は絶対に取りたくありません。と、オードリーさんは言います。
ここは読めば読むほど、「誰も置いてけぼりにしない」というオードリーさんの人間性が伝わってくるところでした。
第二章 《公益の実現を目指して》
第二章 《公益の実現を目指して》 私を作ってきたもの
ここでは、オードリーさんの出自、両親からの影響~経歴をたどるお話でした。
お父様からは、「誰からも概念を植えつけられるな」というクリティカルシンキングを。
お母様からは、「既存の型や分類にとらわれずに自分の方向性を見つけていく」思考法、クリエイティブシンキングを学んだと。
生まれつきの心臓の病を抱えながら、14歳で学校を中退し、15歳で起業。
18歳頃からアメリカへ渡り、シリコンバレーで起業。米アップルにも在籍し、Siriの開発に携わります。
オードリーさんのお話には、ちょくちょく「言葉」や「言語」についての言及が出てきます。
翻訳に興味があったり、哲学者ヴィトゲンシュタインに影響を受けていたり、Siriの言語開発についてだったり、「言葉」への関心が多大にあることがうかがえました。
章の後半では、暗号資産についての話も出てきます。
暗号資産&ブロックチェーンを、現実の政治面に応用することができるかもしれない、ということで。
それが実現すれば、資源をめぐる争いもなくなる可能性があります。
その先には、「公共の利益」というものを核として、資本主義に縛られない新しい民主主義が誕生するかもしれません。
デジタル空間とは、そのような「未来のあらゆる可能性を考えるための実験場所」ではないか、とオードリーさんは考えています。
第三章 《デジタル民主主義》
第三章 《デジタル民主主義》 国と国民が双方向で議論できる環境を整える
この章では、台湾政治の成り立ちや、台湾民主化の父・李登輝氏について。
そして、これから台湾が目指す《デジタル民主主義》についてのお話でした。
中でも面白かったのは、ネットを使って政策についての声を吸い上げるプラットフォーム「vTaiwan」や「Join」のお話です。
台湾では、2019年にプラスチック製ストローが全面的に禁止されました。
この政策のきっかけになったのが「vTaiwan」への書き込みだった、ということでした。
5000名の署名がすぐに集まりました。そこから企業が、再生可能な資源からストロー作ることを承諾。
政策として進められ、紙やサトウキビを使ったストローになっていった、という流れです。
後になってわかったのですが、このきっかけになった書き込みをしたのは、16歳の女子高生だったことが判明し、世間を驚かせました。
環境について思うことがあった一人の少女が、社会を変えたのです。
こうした、インターネットをはじめとするデジタルを使って、話し合いをする、傾聴する、同じ方向を向く。
オードリーさんは、こうした《デジタル民主主義》による未来の可能性を見ているのでした。
第四章 《ソーシャル・イノベーション》
第四章 《ソーシャル・イノベーション》一人も置き去りにしない社会変革を実現する
この章では、オードリーさんの日常や、実際にどのようにしてデジタル民主主義の政治が行われているのか。その動きがうかがえました。
前述した「Join」などのプラットフォームへの投稿。そこに5000人分の署名が集まれば、国が動く。
オードリーさんは「インクルージョン(包括)」という言葉を使って、「デジタルに弱い人でも、誰一人置いていかない」と道を示します。
そして台湾には、AIスクールのようなものがあり、中小企業の経営者がこのような問題に取り組むことができる仕組みになっています。
また、中には「AIを学びたい」と自ら研修生として訪れる経営者もいます。
研修生は教科書的な問題を解決しようとしているのではなく、品質管理の改善方法や生産性を上げる方法など、具体的な問題を解決しようとしています。
こうした官民一体となった《デジタル民主主義》に、台湾のすごさが感じ取れました。
第五章~終章 《プログラミング思考》
第五章 《プログラミング思考》 デジタル時代に役立つ「素養」を身につける
終章 《日本へのメッセージ》 日本と台湾の未来のために
第五章は、これからのデジタル社会で生きるため、どういう姿勢で生きてゆけばいいかのお話。
終章では、日本と台湾が友好に協力してくためのメッセージが語られました。
AIを役立ててくための「プログラミング思考」「アート思考」「デザイン思考」といった思考法。
そして、そのベースとなる「自発性」「相互理解」「共好」という3つの素養が必要だ、ということでした。
【デジタルとAIの未来を語る】印象に残った言葉
他人の話を聞くことへの興味は大きく二つあります。
一つは、「自分自身の生活という角度から物事を見る」という制限を取り払えることです。同じ世界であっても、異なる角度から見ることで、自分自身の視点の限界を超越することができます。
二つ目は、相手の個人的な経験や背景から述べられたことを通じて、「世界はこのような視点でも解釈できると理解できる」ことです。相手が経験したことが将来自分にも起きたとき、私は相手とはまた違う方法を選択するかもしれません。つまり、未来を学習することができるのです。相手の経験を知るとこから自分の視点を学ぶことで、未来に同じようなことが起きたら、きっと自分なりの新しい話し方ができるでしょう。
何事もそうですが、強いプレッシャーの下で競争を強いられると、相手に丁寧に接する余裕がなくなります。つまり、自分の精神の安定が失われてしまうのです。それは資本主義社会における競争原理の弊害とも言えるでしょう。自分の精神が健全で安定していれば、自然とスマートで礼儀正しい人間になれる。そういう余裕のある社会を台湾は目指しています。そのためにデジタルを積極的に有効活用していこうとしているのです。
私はデジタルによって誰かの考えを変えるつもりはありません。古いシステムがどんなに悪いものであっても、私はそれらを否定し、変えるつもりはないのです。ただ、新しいだけのものよりも良いシステムを作って、少しづつ使い勝手の悪い古いシステムから離れていくように人々を啓発していこうとしているだけです。
公益に資することが自らの仕事だと思っていますから、私自身が「何かを変えたい」というようなものは、とくにありません。私は完全に社会の知恵に頼り切っています。市民の知恵こそが最も大切なのです。社会が望むことを実現していくためにITを活用して何ができるかを考えるのが、私の役割だと思っています。
この世界は完璧ではありません。欠陥や問題点などを見つけ、それに対して真摯に取り組むことこそが、今私たちがここに存在している理由なのです。
【デジタルとAIの未来を語る】感想まとめ
“台湾の頭脳”と呼ばれるオードリー・タンさんが、なぜこれほどに注目され、信頼を集めているのかよくわかる本でした!
オードリーさんは、その天才的な頭脳を公益のために注ぎ込んでいるのでした。
そして、台湾の人々を誰一人として見捨てず、すべての国民のための《デジタル民主主義》に取り組んでおられました。
そして、オードリーさんのような人物がいるからこそ、台湾の人々と台湾政府との間にある相互信頼。
「日本も見習うべきだ」とかエラそうなことを言うつもりはありませんが…台湾には行ってみたくなりました!
これからの未来へ道を示す、ひとりのリーダーの姿。この本は読んでおくといいんじゃないかと思います!
他、未来がわかる本のレビューはこちらにまとめています↓
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