レオナルド・ダ・ヴィンチの根底にあるキーワードは「水」だった話

レオナルド・ダ・ヴィンチの根底にあるキーワードは「水」だった話

レオナルド・ダ・ヴィンチの根底にあるキーワードは「水」だった話

レオナルド・ダ・ヴィンチの残したメモをAIにブチ込んで解析した結果、彼の頭の中で一番重要なキーワードは「水」だった。という話をご存知だろうか?

NHK番組でも特集されてたので、見た人もいるだろう。

この「水」エピソードが大好きなので、概要と思ったことをまとめておく。

レオナルド・ダ・ヴィンチの根底にあるキーワードは「水」だった話

レオナルド・ダ・ヴィンチの根底にあるキーワードは「水」だった話

HUNTER×HUNTERな話の入りですまんが、何でもできる系の念能力者で最高位にいるのは「空海とレオナルド・ダ・ヴィンチだな」と勝手に思っており。興味も尊敬もすごくある。

「万能の天才」といわれるが、奇抜なコートを着て街角で自作楽器を演奏するような…奇人であることも間違いない。もちろん一番は絵を描く芸術家として有名で、510億円と言う史上最も高い金額で落札されるような人である。

とはいえ、僕はレオナルドの絵が好きかというとそうでもない。理由はハッキリしている。レオナルドの生きた時代は、依頼された貴族の絵や宗教画が中心なので「描けと言われた絵をどう描くか」の絵なわけで。「何を描くか」から考える絵ではない。

モチーフを掴み取るため悪戦苦闘してる絵の方が面白いので、レオナルドの有名な作品よりは彼のメモに残された発明の設計図とかの方が好きだ。ヘリコプターみたいなの描いてワクワクしてたんだろう。

レオナルド・ダ・ヴィンチのヘリコプター

宗教画などは好きじゃないけど、レオナルドのやることはいちいち興味深い。

人の顔を描くにしても「人体を解剖して、皮膚の下の表情筋を理解したうえで顔を描く」など、“どう描くか”という点でも尋常じゃない。細分化の次元が違いすぎて呆れてしまう。やはりこの狂気的人物への興味は尽きない。

レオナルドのメモをAIで解析する実験が行われた

レオナルドのメモをAIで解析する実験が行われた

さて本題に入ろう。レオナルドに関する、とある実験が行われた。

レオナルドがのこした膨大な手稿(メモ)をデータとしてAIに取り込み、ワードの繋がりや使用頻度を分析させる。解析によってレオナルドの思考を読み解く、というワクワクな内容の実験だった。

「レオナルドの手稿」とは、彼がのこした5000枚を越えるノートやスケッチのことである。
内容は、絵についてや、数学・語学・音楽・建築学・植物学・解剖学・土木・発明・機械工学・地理などなど。あらゆる彼の思考が走り書きされている。レオナルドの頭の中の宇宙が垣間見えるモノだ。

で。手稿の全データが解析された結果、レオナルドの一番根底にあったキーワードが「水」だったのだ。

レオナルドのキーワードが「水」だったのは少年期の体験によるもの

彼は「水」や「自然」が入った言葉を多く残している。例えば以下の通り↓

  • 「水は万物の原動力である」
  • 「あなたが触る水が一番最後に過ぎ去ったものであり、また、一番最初に来るものである。現在という時も同じである」
  • 「理解するための最良の手段は、自然の無限の作品をたっぷり鑑賞することだ」
  • 「自然は自己の法則を破らない」

このような言葉を残したレオナルドだが、長男じゃないこともあり実はロクに教育を受けていない。子供のころは住んでる村に流れる川をひたすら観察していたそうな。

水の観察をしていたレオナルド少年が、大人になっても頭の中にあったキーワードは「水」だった。この答えを聞いてひとつ合点がいった。

「水」というものは動きといい光の反射といい、絵で描くには一番難しいたぐいのものだ。現代では「水 描き方」で検索すればすぐに出てくるが、描画テクニックも何も知らない子供が描くにはムズすぎる流動体。

形がない、とどまっていない、答えがない、水。これが描けたらもはや描けないものはないわけで。

レオナルド少年がたえまなく変化する水をひたすら観察し、子供の頃から深く理解して絵を描いてたんだとしたら…そりゃ何でもできる能力が育っていくのも納得。

水の流れ方までわかるレオナルドは、当時の医者ですら理解していなかった「血流による心臓の弁の動きまでわかった」という話もある。

「水」や「自然の法則」が彼の根っこにあるわけなので、当時テキトーでよかった宗教画の自然背景もレオナルドは手抜きせず描いた、というのは当然に思える。

レオナルドのメモをAIで解析する実験が行われた

自然の一部として人間がいるわけだから、背景の自然も同じクオリティで描かないなんてレオナルドにしてみれば「バカ言ってんじゃねーよ」って感じだったんじゃなかろうか。

現に、レオナルド絵画のほとんどは背景に川が流れており。あくまで手前に描かれた人間は「川の流れの一部だ」とでも言っているようにも感じる。

レオナルドのメモをAIで解析する実験が行われた

↑モナリザも川ありき。

「水」からすべての探究へと流れる

「水」からすべての探究へと流れる

川をひたすら観察していたレオナルド少年が、川の流れから普遍的な真理を獲得していたのは想像に難くない。川の流れの源。川の流れの行く先。すべての物事へとつながっている。

レオナルド少年が早々に行きついた最果て。万物の生々流転。宇宙の法則。その大いなる謎。

「いったいこの世界は何なのか?」と湧いた神秘や畏怖の念。畏れと、それを理解したい、解明したいという興味・好奇心は表裏一体。この好奇心・探求心を満たすため、あらゆる学問へ関心が向くようになる。

画家というより研究者なレオナルドの性質が「絵という金仕事」に研究結果として現れる、というサイクルだったのでありましょう。

「万能の天才」と呼ばれるような人間の思考を創り出したのは、小さな村に流れる1本の小川だったのかもしれないのですね。1本の小川を作る全て、とも言える。

そんなことを思うと、レオナルドの言葉も川のせせらぎのように聴こえてくるではありませんか。

「最も高貴な娯楽は、理解する喜びである」

「この宇宙には様々な形があり、様々な色があり、様々な性質を持った物が溢れている。だが、その全ては、ある一点に集約される。それは驚くべき一点だ。驚いたことに全ては必然なのだ。全ては自然の法則が働いた結果、必然として生まれた。一切、無駄はない。まさに奇跡だ」

「すべては、すべてから来る。すべては、すべてから創られ、すべては、すべてに戻っていく。すべては、すべてに包み込まれる」

最強の凡人、レオナルド・ダ・ヴィンチ。川から全ての理を汲み取った人間。