どうも。カルチャーマニアのSai(@saisei_to_hakai)です。
傑作VRゲーム【東京クロノス】。その中で登場するキャラ、神谷才の過去を描いたスピンオフ小説【渋谷隔絶 東京クロノス】についてお伝えします。
これを読まなきゃ【東京クロノス】は終われない!【東京クロノス】ファン必読です。
【東京クロノス】のスピンオフ小説【渋谷隔絶】感想レビュー《ネタバレ考察》
【渋谷隔絶 東京クロノス】あらすじ
渋谷の政治家一族、神谷家。
ある日突然、一族は異空間へと隔離された。それは、一族以外に誰もいない渋谷。
混乱する中、神谷家の長が殺される。
そこから、投票によって選ばれた人が殺される、残酷な選挙がはじまった。
殺された長を嫌っていた、息子の神谷才。妹分として愛する咲恵を守る。頭脳戦がはじまった。
【渋谷隔絶】感想レビュー(ネタバレあり)
これがライトノベル?めちゃくちゃ中身の濃いヘヴィー小説じゃないか!
「ライトノベル」とされるものを読んだことがなかったので、「こんな本格ミステリなの?」と、面くらいました。
選挙で選ばれた人が殺されてく。というダークな設定。
ここらへんの空気感、頭脳戦は、なんかマンガ【ライアー・ゲーム】思い出した。
登場する中でも、圧倒的なキャラ・神谷衣緒がサイコーですね。
カリスマホスト・ローランドから、泥臭さや人間味を抜いた悪の華って感じ。(陳腐な例えでスマン)
選挙に選ばれた人が処刑される時は、謎の軍団がわらわらと出てくる。
このシーンでは、大みそかの「松本、アウト~!」を連想してしまったんだが。
あれを、黒タイツではなく、カラフルタイツにして。ハリセンではなく、大バサミを持たせた感じかなーとイメージする。(またまた陳腐な例えでスマン)
冗談はさておき。
この作品、見せ方もすごいなーと思って。
この小説を手に取るのは、おそらくほとんどの人が【東京クロノス】をゲームプレイし終わった後ですよね。
【東京クロノス】すごかった!つって、この本を読んだ時。
そこで、神谷才というキャラにはじめて会うわけですが。
もうすでに古くからの友人のような感情を抱くんですよね。
そして【東京クロノス】をクリアしている読み手は、すでに結末を知っているわけで。
「なぜそうなってしまうのか」という疑問を、はじめから持つことになる。
ゆえにストーリーへの求心力が働き。
こういう興味の持続のさせ方は、スピンオフならではだなぁと感じました。
(渋谷隔絶は、そういう仕掛けナシでも傑作でしたが)
読んだことある作家さんの小説は、安心して読めるものですが…
はじめて読む作家さんの小説を読むのって、活字中毒でもない者にとっては“賭け”なんですよね。
「面白いのだろうか?」と疑いつつ読み始めるわけですが…
そこへ、すでに知ってるキャラ。知ってる世界。
こういった共通項があると、すんなりと小説世界に入れる。
VR×小説でこんな新しい仕掛けができるものかと、うなりました。
で。内容についてですが。
僕は【東京クロノス】の登場キャラで神谷才が一番好きなのですが。
キャラクター評で書いた通り、神谷才は「政治家というより芸術家」と感じていました。
【渋谷隔絶】を読むと、神谷雹夏という芸術家が出てくるんですね。重要なキーキャラとして。
なるほど「神谷才となった神谷咲恵は、この芸術家の魂まで背負って生きていたのか」と納得しました。
そして神谷才の、かなわなかった未来。
それらを、【東京クロノス】での神谷才が見せてくれていたと。
作品をまたいで。なんとも切なく、胸の締め付けられるストーリーで。
【東京クロノス】と同じく、【渋谷隔絶】も余韻がエグイ…
あと、読んでて感じたのですが…
神谷雹夏、神谷才、神谷咲恵の三人でサンドイッチ食べるシーン。咲恵のお母さんも重なる。
ここらへんなんかは、人の構図がとても絵画的というか。
そういう、絵になる象徴的イメージ像が散りばめられている印象。
小説映像が、なんか彫刻のレリーフぽいというか、西洋芸術の雰囲気があるんですよね。
ここからは勝手な想像なんですが、著者の小山恭平さんは、神谷雹夏に近いタイプの人なんじゃないかなと思っていて。
そういった感性・精神が、核にある作家さんのような気がして、とても興味深い人物だなというわけで…
【渋谷隔絶】著者の小山恭平さんについて
ボキャブラリーといい、歴史、政治、薬学…あらゆる知識をストーリーに活かしてくる感じといい、
この著者の小山恭平さんという方は、いったい何者なんだろう?
と興味がわいたので、ちょっと調べてみました。
Wikiが出てこない、ってことでも新進気鋭の作家さんなのでしょう。
イイ感じの、インタビュー記事があったので読んだ。
(インタビュー全文はコチラ↓)
>>>小説『渋谷隔絶 東京クロノス』発売記念インタビュー!著者・小山恭平さん「本編を越えて欲しい」という熱意に応えるために
なるほど、制作の流れとしては、【東京クロノス】制作スタートの段階から、スピンオフノベルの構想はあったわけですね。
小山恭平さん自身は、設定だけ引き継いだストーリーを書こうと思っていた。それが、「神谷才の前日譚をやる」ということに決まったと。
ストーリーの骨格は、神話などから持ってきたみたい。そこにミステリ要素も持ってきて、戯曲っぽく仕上げた、と。
「美しいミステリこそが僕の執筆の源泉であり、作家人生の支えになっています」
とのこと。
なるほど、どうりで「ライトノベル」というイメージの作風ではなかったわけだ…
そのあとにあった一言に衝撃が走った。
「今回の作品を作るにあたって、強く影響を受けたのは森博嗣の四季シリーズで…」
ぬぅわににににぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっっっ!!!!!
僕は、今こうして【渋谷隔絶 東京クロノス】のレビューを書いているわけですが。
その前に唯一「VR小説」としてレビューしているのが、森博嗣作品なんですね。↓
>>>VRが登場する小説【有限と微小のパン】考察と感想レビュー!
そこに出てくる天才・真額田四季のシリーズに影響を受けて【渋谷隔絶 東京クロノス】が書かれている、だと?
奇妙な符号…点と点が結びつく。
1998年の小説【有限と微小のパン】で天才・真額田四季とともに描かれたVR。
時を経て、それらの作品に影響を受けて書かれた【東京クロノス】がVRになって世界的に評価されている…と。
神のイタズラ。運命のめぐり合わせ。そういったフレーズが、頭をぐるぐる駆け回りました。
よし、いったん落ち着こう。
小山恭平さんのインタビュー記事に戻る。
「アイディアを出していくために、インプットの量にだけはこだわっています。“イマジネーションとは記憶である”とジェームズ・ジョイスも言っておりまして、記憶野に限界まで創作物を詰め込むようにしています」
レオナルド・ダ・ヴィンチ的な発言。どーりで、あらゆる分野にくわしいわけですね。
世界の奥行きが、ストーリーに垣間見えるのも納得。
「また、できるだけ様々なところに出向いて、たくさん恥をかくようにしています。『恥』は一番強烈で人間的な感情なので、心が波打ち脳が踊ります。」
もはや、アントニオ猪木並みの超人じゃないか。かいてかいて、恥かいて、裸になったら見えてくる。
「大量のインプットと脳の発火が重ねれば、自然と物語は生まれてくるようになります。それに加えて夜寝る前は必ず古典的な神話や民話、さらにシェイクスピアの戯曲をちょっとずつ読むようにしています。」
やべーよこの作家さん…こういう、狂気的なまでに知的好奇心のある異常者…大好物だよ…大好き!
まぁ、小説家というのは、全員もれなくこういうたぐいの生き物なワケですか。
皆、モンスターを心の内に飼い慣らしているわけで。
素敵なモンスターが、ここにもまた一人。
小山恭平さん、発見できてうれしゅうございます。
後日談。小山恭平さんに直接、お話しをうかがった。
好きな画家を教えてもらったりして。
絵画そのもの以上に、作者の物語に惹かれる。というお話を聞いて。
なるほど、すべてのインプットが物語に集約して、物語をつむぐ方だなぁと勝手に思ったのであった。
これからもどんな作品を書かれるのか、楽しみだ。
【渋谷隔絶】のキャラデザインもLAMさんが担当
【東京クロノス】と同じく、キャラデザインは人気イラストレータのLAMさん。
デザインとして見れるのは、神谷才、
少女時代の神谷咲恵、
そして神谷衣緒、の三人。
神谷衣緒の浮世離れ感、ハマッていて素晴らしいですね。
欲を言えば、神谷雹夏さんも見てみたい。
【渋谷隔絶】で印象に残った言葉
本当の友達と見る世界というのは、いったいどんな色をしているんだろう…
「僕も、見てみたいな…」
「義侠心と愛国心を抱いてしまった人間からは、正常な判断力が消えていく。倫理を溶かす劇薬なんだ、あれは」
「いつまでも二人で遊んでいたってつまらないだろ?だから、信頼できる友達を探して、友情でつながったグループを作ろう。みんなで、あの屋上遊園地で遊ぶんだ。きっと、最高に楽しいんじゃないかな」
そして新作【ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウスBC)】へ…
【渋谷隔絶】から【東京クロノス】と来て、三度あらわれたクロノス世界【ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウスBC)】。
Oculus版に加え、Steam版もPSVR版も発売。
こちら【アルトデウス : BC】も、プレイして熱くレビューしてます↓
>>>VRゲーム【アルトデウス : BC】感想&レビュー!エンディングの意味とは?《ネタバレ考察》
【東京クロノス】&【アルトデウス : BC】が好き!って方は、もう1本【渋谷隔絶】という傑作があることをお忘れなく。
【東京クロノス】の熱いレビューはこちら↓
>>>VRゲーム【東京クロノス】感想レビュー!未知のストーリー体験だ!《ネタバレ考察》
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